
膠原病内科・リウマチ科
膠原病内科・リウマチ科
膠原病とは、免疫力・抵抗力に異常をきたし全身の臓器に慢性的な炎症を引き起こす疾患群の総称です。本来は身体を守るはずの免疫系が、自分の臓器を攻撃する異常な免疫反応が起こることから「自己免疫疾患」とも呼ばれます。膠原病は血管や皮膚、筋肉、関節、内臓等の結合組織に炎症が起こり、様々な症状を呈します。
全身性エリテマトーデス(SLE)や全身性硬化症、多発性筋炎・皮膚筋炎、シェーグレン症候群、ベーチェット病など多くの疾患が含まれています。症状としては発熱、関節痛、皮膚症状(皮疹、レイノー症状など)、眼・口腔症状(ドライアイ・ドライマウス、口内炎など)が多く認められます。
膠原病の多くは、原因が不明で様々な臓器に障害が起こるため、以前は生命に関わる難病とされてきました。近年の医学の進歩によって、膠原病の生命予後は大きく改善しています。ステロイドを用いる治療法が一般化するとともに、免疫抑制剤や生物学的製剤の開発が進み、これらを併用することでステロイドの副作用を最小限にしつつ病気の勢いを抑え、再発を防ぐ治療をめざせるようになっています。しかし、現在でも診断がつきにくく、治療には専門知識が必要であるため、専門医のいる医療機関での管理が不可欠です。当院では最新の膠原病の知見に基づいて、一人ひとりの患者様の病状やライフスタイルにあった適切な治療に取り組んでいます。
膠原病の診断は、症状の経過、身体診察、血液検査・尿検査・画像検査などを組み合わせて、総合的に判断します。まず、全身を診察して膠原病が疑われた場合は、次に血液検査を行います。白血球数やCRP、赤沈(赤血球沈降速度)などの炎症反応と呼ばれる検査でも、ある程度の診断がつきますが、確定診断には特殊な検査が必要で、膠原病全体で陽性率が高い「抗核抗体」と呼ばれる検査が最も重要となります。さらに、それぞれの膠原病の診断には、リウマチ因子や抗DNA抗体検査といった専門的な検査、貧血の有無、筋肉の炎症をあらわす検査の数値などを確認します。
血液検査のほかに画像検査も重要です。関節リウマチなどでは、手のX検査などで診断を確定したり、SLEなどでは胸部X検査が診断の手助けになったりすることもあります。また、尿検査での蛋白尿や血尿なども重要な所見となります。
膠原病は全身の疾患であるため、確定診断には血液検査だけでなく、このような色々な検査が必要となってきます。場合によっては抗核抗体やリウマチ反応が陽性でも、膠原病ではないこともあるため、しっかり見極めることが重要になります。また、膠原病はそれぞれに診断基準が定められていますが、必ずしも初めから診断基準を満たすものばかりとは限らず、慢性の経過をたどることが多いため長期間の経過観察が必要になります。
治療に当たっては正確な診断と、病気の活動性の評価が大切です。膠原病の種類によっても治療法は異なりますが、活動性の高い時期には副腎皮質ステロイドホルモンが用いられます。一般的にステロイド治療と呼ばれており、通常は少し多めの量から治療を開始し、徐々に減量していきます。ステロイド治療は効果が十分期待できるものの、その反面副作用にも注意が必要です。不眠、便秘、脱毛、にきび、肥満(特に顔が丸くなる)など、ホルモンの作用による影響のほか、長期に服用していると高血圧、糖尿病、高脂血症などを併発したり、消化性潰瘍(胃潰瘍等)を発症したり、骨を弱らせたり(骨粗鬆症:こつそしょうしょう)、抵抗力が弱くなり感染症にかかりやすくなることもあります。そのため使用時には細心の注意が必要で、治療経験豊富な専門医の指導が必須となります。
このほか、それぞれの膠原病に対して特徴的な治療法があります。関節リウマチに対する抗リウマチ薬や、高い効果が期待できる免疫抑制剤や生物学的製剤などがありますが、やはり副作用には十分な注意が必要です。副作用がほとんどみられないという点から、膠原病に対する漢方治療も注目されています。
膠原病は難病であることが多いため頻回に検査を行うなど、治療に対して経済的負担が大きくなることがあります。そこで国が指定した難病疾患において、治療費の一部負担金を免除する難病特定疾患制度が設けられています。膠原病では、SLEや筋炎など多くの疾患が指定されています。お住まいの都道府県の相談窓口(保健所など)で配布されている臨床調査個人票(診断書)に、主治医が意見書として記載し、提出することで助成を受けられることがあります。詳しくはお尋ねください。
関節リウマチは膠原病の中で最も多い疾患です。免疫の異常により関節を包む滑膜に炎症が起こり、それが増殖し、骨や軟骨を破壊します。放置すると関節が破壊され、日常生活に支障をきたすようになります。主な症状は、関節の痛み、腫れ、朝のこわばりなどです。手足の指、手首に症状を認めることが多いですが、肘、肩、膝、足首などにもみられます。また、全身倦怠感や微熱、食欲低下などの全身症状や、皮膚(皮下結節など)、眼、肺など、関節以外の症状が出ることもあります。
早期の診断と抗リウマチ薬や生物学的製剤、JAK阻害薬を中心とした適切な治療によって、関節の炎症を抑え、通常の日常生活を送ることができる時代になっています。
免疫関連 | リウマトイド因子(RF)、抗環状シトルリン化ペプチド抗体(抗CCP抗体)、MMP-3(マトリックスメタロプロテアーゼ‐3)、免疫グロブリン |
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炎症関連 | CRP(C反応性タンパク)、ESR(赤血球沈降速度[血沈、赤沈]) |
貧血関連 | 赤血球 Ht(ヘマトクリット)、Hb(ヘモグロビン[血色素量])、血小板 |
リウマチ以外の病気と鑑別するもの | 抗核抗体(ANA)など |
X線検査(レントゲン検査) | 基本的な画像検査で、関節や骨の状態を確認します。 |
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MRI検査 | 骨の状態を高感度に確認でき、滑膜や関節の周りの筋肉や靭帯、軟骨といった骨以外の組織の炎症や腫れを確認することができます。 |
関節超音波(エコー)検査 | 関節の炎症をリアルタイムで確認することができます。骨の破壊も高感度にみることができます。 |
現在の治療目標は、「痛みや炎症がなく、関節破壊がなく、発症前と同じ社会生活が送れること」です。この状態を寛解(かんかい)といいます。
この目標を達成するためには、早期に診断し治療を開始し、さらに治療中も治療効果を評価して、必要に応じて治療内容を検討する必要があります。
メトトレキサートは第一選択薬として治療の中心になる薬剤です。肺の病気があったり、肝臓や腎臓の機能が悪いとが使用できない場合があります。
生物学的製剤(Biologics)はバイオテクノロジー(遺伝子組換え技術や細胞培養技術)を用いて製造された薬剤で、特定の分子を標的とした治療のために使われます。点滴あるいは皮下注射で投与します。一般的に治療効果が高く、また併用するステロイド内服量を減らせることも多いです。ただ、必ずしも全員に効果があるわけではなく、また各生物学的製剤が有効かどうかを事前に推測することは難しいです。薬剤ごとに特徴があるため、血液検査結果、合併症の有無、点滴製剤か皮下注射製剤かなど、様々な点を考慮して最適な薬剤を選択する必要があります。
JAK阻害剤は異常な炎症を起こす炎症性サイトカインによる刺激が、細胞内に伝達されるときに必要なJAKという酵素を阻害する内服薬です。効果は生物学的製剤とほぼ同等といわれています。免疫の機能を下げる働きがあるので感染症にかかりやすくなります。帯状疱疹、上気道炎の頻度が高く、肺炎、結核、敗血症等を重症なものにも注意が必要です。
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